Artists

とやまのアール・ブリュット作家たちの Profile や History


■展覧会パンフレットより

 

和日(わび) 作美(さび) 素生(すき) の表現者たち

 ボーダレス・アートセッション in 勝興寺

BORDERLESS・ART SESSION in 勝興寺

  WABI SABI SUKI no Hyougensya-tachi

 

期 間:2019年11月16日~24日

会 場:勝興寺(高岡市)

主 催:富山県障害者芸術活動支援センター ばーと◎とやま

共 催:勝興寺/公益財団法人勝興寺文化財保存・活用事業団

    東海・北陸ブロック障害者芸術文化活動広域支援センター

後 援:富山県/高岡市/NHK富山放送局/チューリップテレビ/北日本新聞社

出品協力:医療法人明心会柴田病院

     社会福祉法人あいち清光会サンフレンド

     社会福祉法人あしたの会自然の家

     社会福祉法人さふらん会さふらん生活園

     社会福祉法人新潟みずほ福祉会障害者支援施設みのり園

     社会福祉法人新川むつみ園

     社会福祉法人名東福祉会メイトウ・ワークス

     社会福祉法人やまなみ会やまなみ工房

     自立サポートJam

     特定非営利活動法人若狭美&B ネット若狭ものづくり美学舎

     みんなで舞台に立とう!


辻龍之介

家にあるもの、好きなテレビ番組、生活の中から描きたいものを選んで描く。特に知人宅や自宅にいるペットを描いている時が一番安定している。

シンプルでわかりやすい線による表現。気に入ったものは見るだけでなく触って確かめることがよくあり、そのせいか、動物のからだの描き方もかたちがしっかりして自然である。

 

 

村中洋介

本人用に持ち手を長くした筆で黒一色で描く。鳥や人の周り、画面中に描かれるのは花なのだ。何を描いてもそこには彼の信じる楽園になる。絵が好きなのかよくわからないくらいおしゃべりばかりしているが、突然描き始めると100号を埋めてしまう。

 

 

シノタケ

不登校だった彼は、絵を描く喜びを通して自分を見つけてきた。

繰り返しのパターンが不安定な形の中を埋め尽くしていく描き方は、自分が好きなものを繰り返し描く中で見つけた描き方である。何度も塗り重ねた画面からは重厚ささえ感じる。

最近は円空(えんくう)や木喰(もくじき)などの仏像彫刻の画集からインスピレーションをもらい描くほとけさまの作品が多い。

 

 


中谷稔

グループホームで生活しながら、日本画家清河恵美さんの絵画教室に週1回通って制作を続けている。

様々な画集などを資料にして、お気に入りの人物を描き出し、独特の区切り方で色分けして仕上げていく。

自ら美術館に足を運んで鑑賞することもあり、羊羹、きんつばが大好きな心優しいアーティストである。

越中アートフェスタには毎年入選、奨励賞受賞などの評価を受けている。 

  

磯野貴之

ページを繰っても繰っても続いていく電線と無数の電柱。一定のペースで続くが、時折枝分かれして視界から消えていくこともある。しかし、たどるべき本線はずっと目の前にある。

3ヶ月間集中して描きあげた80枚入りの落書き帳36冊分。電線は前ページと次ページでつながるように描かれており、次の落書き帳に移る際にも、その線は引き継がれている。

つまり、36冊分のつながった電線を描いた大作なのである。

 

 

荒見真央

好きなタイプは、お笑い芸人からダンディーなオジサマまで幅広く、ピアスやマニキュアと、お洒落も欠かさない。そんな彼女の描写は、見惚れてしまう程パワフル。クレヨンを激しく上下させるうちに、みるみる画面が出来上がっていく。モチーフとなる写真の中の動物たちは、彼女のように、可愛らしさと魅惑を併せ持つ。

 

  


浅野達哉

ガムテープを丸めた専用のペンで鼻歌を歌いながら描かれる動物や魚は、どれもユーモラスで突き抜けた明るさをもっている。

ものおじしない線がその存在感を強くしてなんとも言われぬ安心感を醸し出している。

 

 

 



「びーあーと」 Vol.3(2020年10/17発行)より

    ※富山県障害者芸術活動支援センター ばーと◎とやま 企画・編集

 

末永征士さん

 

 末永さんは、福祉事業所に通いながら、月に1、2度の創作活動に参加し作品を描いているアーティストです。

幼いころより電車に関心があり、客車、貨物車関係なくいろいろな車両の細かいところまでこだわって描くのが大好きでした。

電車を描くことからいろんなものを描く楽しみを知り、今では図鑑や写真を見ながら、マーカーとアクリル絵の具を使って仏像から自然、動物まで、さまざまなものを描いています。

いつも本や写真がお手本になりますが、線を引くごとにお手本の面影は消え、大胆な構図とシンプルな形状やカラフルな色、それらをつなぐように隙間に埋まっていく不規則な線によって、どこにも見たことのない表現が現れます。

 

描き方にも自分なりのルールがあるなど、職人気質のアーティストかと思いきや、色形の選択や仕上がり加減を気にして揺れ動く面もみせる愛すべき頑固者です。

また、時事ネタや思い出話が大好きで、絵を描きながら近くにいる人を質問攻めにして楽しむこともあります。

 

そんな末永さんの姿が、作品の面白みにもつながっているようです。

 

2014年からは毎年、射水神社の拝殿横に飾られる大絵馬を奉納しており、2020年9月にオープンしたスターバックス射水店のアートを同じワークショップに通う前田拓海さんと一緒に手がけました。

 

 

Profile

2007 富山県立高岡支援学校 卒業

2009 L+P=?(元麻布ギャラリー富山)

2012 この素晴らしき世界 丸木スマとアール・ブリュット(西田美術館:上市町)

2013 七つの彩(いろ)の物語 前田拓海・末永征士二人展(射水神社:高岡市)

2014 射水神社大絵馬 奉納(以後毎年奉納)

2015 太閤山ビエンナーレ2015(富山県立近代美術館ふるさとギャラリー)

   越中アートフェスタ 佳作

2016 越中アートフェスタ 奨励賞

2017 越中アートフェスタ 佳作

2018 OPEN DOOR! ボーダレス・アートセッション in 富山(富山県民会館美術館)

2019 個展「Colo Memo」(大島絵本館:射水市)

2020 スターバックス射水店壁絵 制作

「ハナデストハッパ」の制作に打ち込む末永さん 2020年頃

 

支援学校時代に描いた電車


末永さんが描いた「くたべ」は

疫病退散妖怪クタベ絵はがきになり、

県内95カ所の郵便局で癒しキャンペーンとして

無料配布されました。


八十九手観世音菩薩

展覧会場の「ハナデストハッパ」

大絵馬 射の獅子



「びーあーと」 Vol.3(2020年10/17発行)より

    ※富山県障害者芸術活動支援センター ばーと◎とやま 企画・編集

 

シノタケさん

 

子供のころは行動に自制がきかないことがあったとはいえ、大きな問題もなく過ごしてきました。

でも、周囲との違いを意識しはじめてからは髪が伸び放題になり、部屋に閉じこもるように。

 

特別支援学校に進学したものの引きこもる日が半年以上続きましたが、担任の助言によって美術部だけ参加する放課後のみの登校が始まりました。

よく落書きをしていたから絵は好きなのではとの家族の話を頼みにした懐柔策だったので、頑固な彼がその案に応じたことには家族も意外に感じたそうです。

 

顧問の先生と二人での部活動。先生は画材を渡したあとは自由に過ごさせ、描き方などに注文をつけず、描きたくなければボーッとして帰っていいですよとも言いました。

描けばどんな絵も作品として飾り、大切に扱ってくれました。

 

放課後登校が増えるにつれ、いつしか授業にも参加できるようになっていきました。

さらに転機となったのは、県主催の美術展で賞を取ったことです。

 

「もし絵がなかったらどうなっていたんだろう」。自棄におちいりがちだった生活を心配する家族にとっては、光を感じた素敵な出来事でした。

 

それからは、荒々しく筆を動かしたり、一本一本埋めこむように線を刻んだり、そんな「線から湧き上がるエネルギーが個性の作品」を描き続けています。

 

今も月数回通う絵画グループでいろいろな大きさの絵を描いていますし、地元新聞のコラムの読み写しにも毎日休まず取り組んでいます。

 

福祉事業所では、時間が空けば紙片やスケッチブックに何か描いているし、刺繍や「さをり織」用の糸くずを集めて、布に縫いつけて何か表現しようとしているらしい。

描く、写す、そして何かを表す、気がつけば創作だらけの日々を過ごしています。

 

 

Profile

2006 富山県立高岡支援学校 卒業

   第1回越中アートフェスタ 奨励賞

2007 workshop KAI=KAIグループ展「L+P=?」「B・O・B」(~2010)

2008 八尾スローアートショー2008(富山市立樫尾小学校)

2009 越中アートフェスタ 優秀賞(~2013 入選)

   八尾スローアートショー2009(富山市立樫尾小学校)

2010 丸木スマとアール・ブリュット この素晴らしき世界(西田美術館:上市町)

2013 七つの彩(いろ)の祝い干支(射水神社:高岡市 以後毎年出品)

   アールブリュット全国公募 入選

2014 アール・ブリュット☆アート☆日本2

   (滋賀県 ボーダレス・アートミュージアムNO-MA、瓦ミュージアム会場)

2016 個展「シノタケ・アート・セッション」(大島絵本館:射水市)

2018 OPEN DOOR! ボーダレス・アートセッション in TOYAMA(富山県民会館美術館)

2019 和日 作美 素生の表現者たち ボーダレス・アートセッション in 勝興寺(高岡市)

「アール・ブリュット☆日本2」

会場にて(2014年)

 

猩々

  

千手観音


御車山 2013

 

beautiful world

 

another world

 



「びーあーと」 Vol.1(2019年11/15発行)より

    ※富山県障害者芸術活動支援センター ばーと◎とやま 企画・編集

 

荒見真央さん

 

とにかく絵を描くことが好きな真央さん。現在は全く異なる2種類の表現を行っています。

動物画はワークショップで、落書きは自分の部屋で生まれました。

 

まず一つはNPOスタッフが「GRAFITTI」と呼んでいる作品。広告の裏や紙の切れ端に、殴り描きのような文字で、気になる言葉や自戒のセリフ、赤い服を着た丸い女の子などが繰り返し描かれています。

コミュニケーションが上手ではない彼女と誰かをつなぐための大切なツールとして表現されているようです。

気になる人に見せたり、プレゼントもされる作品で、コミュニケーションツールとしても使われるのですが、ある意味、描き捨ての日記ですね。

 

もう一つの表現は大小さまざまな紙に描いた動物の作品群。ワークショップでは動物しか描かないと決めているらしく、毎回到着と同時にクレヨンを準備し、持参した動物の写真を見ながら、ものすごい集中力とスピードで紙にクレヨンを擦りつけていきます。

クレヨンが小さくなって持てなくなった頃、鮮やかな動物が画面上で産声をあげます。

 

完成作品を抱えて記念写真を撮ると、次の予定に向けてさっと帰っていく!

お母さんは、こだわりが強く感情がつかめない娘との関わりに不安を感じていたそうですが、ある日、描き続けていた動物の絵に変化を感じました。

鮮やかな色のシロクマが笑っている!

この子は絵を通して感情を外に出しているんだ!

 

この経験を通して創作活動の大切さに改めて気づいたそうです。

アートへの絶対的な信頼、描くことと生活が密接につながった真央さんの、次の作品が楽しみです。

 

 

Profile

2010 丸木スマとアール・ブリュット この素晴らしき世界(西田美術館:上市町)

2011 越中アートフェスタ 奨励賞

2012 個展「Maoful zoo」(富山市ファミリーパーク)

2013 太閤山ビエンナーレ2013(富山県立近代美術館分館 ふるさとギャラリー)

2015 アール・ブリュット◎高岡 ~ココロノチカラ・イロ・カタチ~

   (高岡市美術館市民ギャラリー)   

2016 脳みそちゅんちゅんな理由 誰かおせ~展(六感美術館:福井県)

2017 ピアニストYUTAとのペインティングライブパフォーマンス(サンシップとやま)

2018 OPEN DOOR! ボーダレス・アートセッション in TOYAMA(富山県民会館美術館)

   アール・ブリュット◎高岡3 ~らしくとままで~(高岡市美術館)

   アール・ブリュット展 in 上越2(浄興寺:新潟県)

   HEARTの中にはARTがある ボーダレス・アートセッション in TOYAMA

   (薬種商の館 金岡邸:富山市)

   明治150年記念事業 現代アートとの出会い展 5人の作家

   (豪農の館 内山邸:富山市)

2019 ビエンナーレTOYAMA2019(富山県美術館)

   和日 作美 素生の表現者たち ボーダレス・アートセッション in 勝興寺(高岡市)

ワークショップにて(2022年)

 

GRAFITTI

 

しろくまくん

 


イルカ

 

無題

 

ペンギン

 



「びーあーと」 Vol.5(2022年3/19発行)より

    ※富山県障害者芸術活動支援センター ばーと◎とやま 企画・編集

 

石田唯我さん

 

小学校6年生の頃から絵を描きはじめ、特別支援学校の中学部で美術部に入部したことをきっかけに、本格的に制作を始めました。

最初の頃は戦いの絵ばかりでしたが、次第に草花の絵が多くなり、さらに独特の細かな風景の表現へと変化していきました。

 

中世の欧風建築。さまざまな生き物。本人がタボちゃん※と呼ぶ老若男女やカラクリ飛行船などの架空の乗り物や不思議な生き物が飛び回り、自由に生きる国や空中都市。それらが巧みに構成された画面からは、「世界のどこかにある場所」の記録画のような雰囲気が漂います。

 

※本当は愛をこめて「あほちゃん」と呼びたかったようですが、周囲からの助言で「タボちゃん」と改名したらしいです。

 

美術部や自宅で毎日1~3枚のペースで制作を続けています。ゼブラの0.3~0.35のボールペンと透明水彩を愛用し、ハガキサイズのものから模造紙大の作品まで、さまざまな愉快な国を描いています。

2022年春には社会人として、より創作活動にがんばっていくそうです。

 

高岡市の伏木古府郵便局には、石田さんが新局開設に向けて描いた新作「タボの国の郵便局」が常設展示されています。

ぜひ足を運んでみてください。

 

 

Profile

2018 第17回キラキラっとアートコンクール 優秀賞

2020 アートビリティ登録作家となる

   第19回キラキラっとアートコンクール 優秀賞

   アートパラ深川 準大賞

2021 第20回キラキラっとアートコンクール 優秀賞

   アートパラ深川「三井不動産 アートX∞プロジェクト in 清登」

   「庭園 produced by 假屋崎省吾」で作品展示

   アートパラ・マーケット・フェア 準大賞

   第27回全国特別支援学校文化祭りそなグループ賞

   全国生活サポート協会「アールブリュット作品展」入賞

2022 富山県立高岡支援学校 卒業

 

無題

 

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